『全裸で唐揚げ』


神奈川「なあ」

猪狩「ん?」

神「お前何やってるの?」

猪「いや、料理だけど」

神「見りゃわかるよ」

猪「じゃあ何だよ」

神「何でお前は全裸なのか、って事を聞きたいわけよ俺は」

猪「・・・料理ができたら説明するからちょっと待ってろ」

神「わかった」



猪「俺は個性的な人間でいたい」

神「はぁ」

猪「我流でいきたいと常に願っている、いわば人と被るのが極端にいやな人種なのさ」

神「どういう頭の回路図があれば全裸で料理という発想が出てくるのさ」

猪「発端は二日前にさかのぼる」

神「ほう」

猪「ある友人宅に遊びに行ったらさ、その親父さんが半裸で天ぷらを揚げてたんだ」

神「どんな親父だよ、子供の顔が見てみたいな」

猪「ぶっちゃけお前の親父なんだが」

神「・・・・俺の親父に何があったんだ」

猪「目にゴミが入ってまばたきしてたらウインクと間違えられて、向かいのOLにセクハラで訴えられて会社をクビになったそうだ」

神「史上稀に見る情けない退社理由だな、外人とヨロシクやって退社しそうなアスリートみたいだ」

猪「お前の親父だぞ」

神「・・・・そうだった、ゴメン親父」

猪「で、俺は物凄い感動したわけよ、その発想に」

神「半裸つっても上半身裸とかじゃないのか?何で感動するわけ?」

猪「体の中心から斜め四十五度の角度で半分だ」

神「・・・・親父わざわざ服作ったのか・・・・」

猪「凄くないか、その発想?」

神「親父・・・・」

猪「で、俺は感動したから頼んだのさ、その天ぷらを食わせてくれって」

神「・・・・」

猪「これが美味くてな、俺はまた感動した」

神「・・・」

猪「人の話聞けよ!」

神「あ、ごめん、どこまで進んだっけ?」

猪「貴様の親父の飯が美味かったってとこまでさ」

神「つーかなんでお前家でメシ食ってんだよ、いつの間に」

猪「お前が自室で漂流生活してる間にだ」

神「なたね油しかないと思ってたのに」

猪「俺とお前の親父で食材を片っ端から天ぷらにして食った」

神「お前のせいかよ」



猪「とりあえず、俺は感動した」

神「ふむ」

猪「そしてそれにインスピレーションを受けて始めたのが今回の全裸で料理の真相さ」

神「インスピレーションとかいってるけど実質パクリじゃね?」

猪「違う。まず親父さんは半裸だが、俺は全裸だ」

神「まあ確かに」

猪「そして何より俺が作ったのは唐揚げだ」

神「あ、ホントだ」

猪「大体人と被るのが嫌いだといっただろう。この唐揚げは見た目は普通だが、味付けや中身にはたっぷりと俺流アレンジが加えられ、それはまさにオンリーワンといって過言でない。つまるところこの唐揚げが持つ実力は明々白々であり、当然その評価は・・・!」

神「食うぞ」





猪「マズイ!」

神「マズイ!」

猪「もう一個!」

神「いらんわ!」